環境との共生を、商業施設の当たり前に。
三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAYが示す三井不動産の施設づくりと、「ゼロカーボンファニチャー」が広げる可能性

「残しながら、蘇らせながら、創っていく」を実現した、ららぽーとの1号店
― まず、ららぽーとTOKYO-BAYがある南船橋エリアの全体像についてお聞かせください。
神田さん:南船橋エリアには、ららぽーとTOKYO-BAYだけでなく、多様な施設があります。例えば、2023年にJR南船橋駅直結で開業した「三井ショッピングパーク ららテラスTOKYO-BAY(以下、ららテラスTOKYO-BAY)」は、地域の皆様の日常生活を支えるスーパーやクリニックなどが集まるライフスタイル型商業施設です。さらに2024年には大型多目的アリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」が開業しました。それぞれ役割の異なるアセットが連携しながら、街全体の賑わいを生み出しています。
そうした中で、ららぽーとTOKYO-BAYは、広域から電車やバス、車で来られる方もいれば、近隣にお住まいの方が日常の買い物に訪れる施設でもあります。今回の建て替えを進めるにあたり、お客様や関係者から「実は初デートの場所でした」「学生時代、毎日のように行きました」というお声をいただくことが本当に多くて。皆さんの生活に根付いている施設だと改めて実感しました。
関係者やお客様からさまざまな声が届いていると話す、神田さん
― ららぽーとTOKYO-BAYの建て替えにあたり、どのような思いで臨まれたのでしょうか。
神田さん:ららぽーとTOKYO-BAYは、ららぽーとの1号店であり、社内では旗艦物件として認識されています。ららぽーとの中で、規模も売り上げも一番大きな施設です。過去に何度もリニューアルを重ねており、今回が19回目になります。最初は北館だけのところを南館、西館と増設し、北館は開業当時から残る一番古い館でした。
だからこそ、今回の建て替えには特別な重みがありました。1981年の開業から40年以上が経ち、新たに建て替える建物は、さらに40年残り続けるかもしれない。弊社でも注目度の高いプロジェクトですので、「次の時代にも愛される施設をしっかり創らなければ」という思いは、チーム全体で強く共有していましたね。
― その思いを、具体的にどのような形で実現されたのですか。
神田さん:弊社には、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」という街づくりビジョンがあります。次の40年を見据えた施設づくりにおいて、ららぽーとTOKYO-BAYはまさにそれを実現したプロジェクトの一つです。
例えば、北館と南館をつなぐ南北ブリッジが2本あり、今回の建て替え工事のエリア内にちょうど含まれていました。お客様にとっては、日常的に使われている動線です。全部壊して建て替えることもできましたが、馴染みのある動線は残したかった。工事中でもブリッジを慎重に残して、新築した北館と再びつなぎました。さらに、従来なかった屋根を設置して使い勝手を向上させています。
また、北館はもともと2階建てで、南館や西館は3階建てでした。南館の3階から北館に足を延ばそうとしても、その先は駐車場。お買い物を楽しめるフロアがなかったんです。3階建てに揃えたことで全館がつながり、お客様の回遊性も大きく向上しました。
生活に根付いた動線や記憶を大切にしながら、残すべきものは残し、改善すべきところは新しい価値を加えていく。それが今回のプロジェクトの軸でした。
全長約350mのハーバー通りは、幅員を約2倍に拡幅。南北ブリッジで北館と南館を行き来できる
日本一のフードゾーン誕生。北館Ⅰ期リニューアルの全貌
― 北館Ⅰ期のリニューアルで、特に力を入れたポイントを教えてください。
神田さん:Ⅰ期で一番力を入れたのは、3階の飲食ゾーンです。「全国のおいしいものをららぽーとTOKYO-BAYで気軽に食べられる」というコンセプトのもと、フードコート20店舗、レストラン18店舗の合計38店舗を3階に集結させました。さらに、北館Ⅰ期のフードコート新設により1,400席増やし、施設全体のフードコートの席数は合計2,500席です。北館Ⅰ期3階飲食ゾーンの店舗数と施設全体のフードコート席数は、日本一の規模となっています。
日本一の席数を誇るフードコート
― それだけの規模のフードゾーンを設けた背景をお聞かせください。
神田さん:いずれⅡ期も完成して館として一つになった時に、多くのお客様に来ていただくためには、やはり食事の充実が欠かせません。お買い物の合間の休憩にも、食事そのものを目的にお越しいただく場面でも、食の環境が整っていることは大きな要素だと考えていました。
ただ、もともと飲食環境が足りていなかったわけではありません。2024年のLaLa arena TOKYO-BAY開業後、多くのお客様にららぽーとTOKYO-BAYへご来店いただく中で、特にイベント前後の時間帯のご利用ニーズが高まっていると感じるようになりました。そこでその時のシーンに合わせて使い分けていただけるように、Ⅰ期のリニューアルでフードゾーンをさらに充実させています。
中でもフードコートは1,400席の規模で、4つのゾーンに分けてエリアごとに雰囲気を変えた空間づくりをしました。
4つのゾーンに分かれたフードコート。こちらはカラフルなチェアが並ぶエリア
― お客様が気づきにくい部分で、取り組まれていることはありますか。
神田さん:環境面の取り組みは多岐にわたります。例えば、使用した水を浄化してトイレの洗浄水や植栽の灌水に再利用する中水システムを導入。灌水設備の電力には太陽光発電を活用し、舗装材にはヒートアイランド対策として保水性のあるものを採用しました。
建物全体としては、建築物の省エネルギー性能を第三者機関が評価するBELS認証を取得しており、設計一次エネルギー消費量を30%以上削減しています。加えて、ESGの観点から環境・社会への配慮を評価する「DBJ Green Building認証」では、最高評価の5つ星をいただきました。
ただ、正直に申しますと、お客様がこうした取り組みを意識される場面はそれほど多くないかもしれません。弊社では「& EARTH for Nature」という環境との共生宣言のもと、自然と人・地域が共に豊かになる街づくりを進めています。その実現にあたり、お客様には不便をおかけすることなく、意識せずとも環境に配慮された空間で過ごしていただく。そうした施設づくりを大切にしています。
デザインと安全性で選んだ家具が、「ゼロカーボンファニチャー」だった
― 商業施設の家具の選定には、どのようなことが求められるのでしょうか。
神田さん:テナントさんが主役ですので、建物や家具が目立ちすぎないよう配慮しています。一方で、商業施設にはわくわくする非日常感も必要です。お客様にはそうした雰囲気を感じていただきながら、テナントさんの魅力は邪魔しない。家具にはそのバランスが求められます。
ららぽーとTOKYO-BAYには不特定多数のお客様が来られますので、皆さんにとって使い勝手がよくなければいけない。個性的なファニチャーは入れづらくなってしまうんです。
さらに言えば、建物の設計やテナントさんの選定など大きな部分から順に決まっていく中で、ファニチャーにかけられる予算はどうしても限られます。
テナントの魅力を引き立てる、デザインと色彩
― そのような背景がある中で、どのように家具を選定されたのですか。
神田さん:ららぽーと1号店として、LaLa Portの語源である“La Port=港”を北館の建て替え計画のコンセプトとして掲げており、港町の雰囲気を感じる家具をオリバーさんにいくつかご提案いただきました。ただ、ひと口に「ポート」といっても、国や地域によってデザインは異なります。その中から今回は、アメリカの西海岸を彷彿させる落ち着いたトーンの家具を選びました。
特にフードコートの家具は、不特定多数のお客様が毎日使われるものですから、まず安全であることが大前提です。洋服が引っかからないか、お子様がケガをしにくい形状かなど、細かい基準を設けています。それらをクリアしたうえで、空間のコンセプトに合うデザインか。予算として無理がなく、万が一の際にも躊躇なく買い換えられるか。安全性、空間に合ったデザイン、コスト。この3つを同時に満たすことを基準に家具を選びました。
― その選定の結果、ゼロカーボンファニチャーに出会ったのですね。
神田さん:はい。フードコートは4つのゾーンがあり、そのうち一つのゾーンに置く家具を選定する中での出会いでした。
実は、環境に配慮された製品から選ぼうという意図はまったくなかったんです。「この空間にどの家具を置けばよいか」というフラットな目線で見て、家具単体としてベストだと判断して選びました。その結果が、ゼロカーボンファニチャーでした。
製造の仕組みをお聞きすると、材料調達から製造、流通、リサイクルまでのプロセスでCO₂総排出量を実質ゼロにしているという。「ここまで緻密に設計され、実現しているのか」と驚きました。さらに、適切に管理された森林の木材を使用したFSC®認証製品でもあったんです。
デザインと安全性で選んだ家具が、これほどまで環境に配慮された製品だったとは思いませんでした。
― 環境に配慮された製品に対して、以前はどのような印象をお持ちでしたか。
神田さん:サステナブルな製品は、その分の付加価値が価格に反映されているイメージがあります。そのため、「環境にいいものを導入したい」という意思があって、はじめて選ぶものだと思っていました。安全性やデザイン、コストを優先して選んだ先に、環境面でも優れた製品があるとは想像もしていなかった。でも、今回は、まさにそれが起きたんです。チームのメンバーも誰も、環境に配慮された製品を選んでいることには気づきませんでした。
これまで、ファニチャーで環境によいものを取り入れたいと思いつつも、コスト面でなかなか実現できないのも実情でした。それが今回、この予算で叶ったことに、思わず目を見張りましたね。
フードコートに配置されたゼロカーボンファニチャー。木目の温かみが空間に溶け込んでいる
「デザインと安全性をふまえて、この空間に合う」として選ばれた、ゼロカーボンチェア
― ゼロカーボンファニチャーを導入したことで、家具に対する見方は変わりましたか。
神田さん:変わりましたね。環境配慮を掲げた家具は“特別なもの”だと思っていましたが、純粋にデザイン性があって使い勝手のよい家具として存在している。「環境にいいから」と色眼鏡を使わず、「シンプルによい製品だ」と感じて選べる。それだけでも、こうした家具がますます普及しやすくなると感じます。
というのも、同じ条件の製品が並んでいれば、環境に配慮された方を選ぶと思うんです。今回は一人掛けのチェアを選びましたが、バリエーションが増えれば選択肢は広がります。いずれ、商業施設の家具が自然と環境に配慮されたものばかりになる未来もあり得るのではないでしょうか。
「デザインで選んだら、環境に配慮された家具と知り驚いた」と語る、神田さん
― Ⅱ期に向けて、家具の面で検討されていることはありますか。
神田さん:北館Ⅱ期はまさに設計を進めている段階です。その中で、もともと北館Ⅱ期エリアにあったものを、生まれ変わる館の中で一部活用できないかと考えています。ららぽーとTOKYO-BAYに来てくださったお客様が「見覚えがある」と感じていただけるような、記憶をつなぐ取り組みです。弊社が大事にしている「残しながら、蘇らせながら、創っていく」という言葉は、建物だけでなくファニチャーにも通じる考えだと思っており、現在オリバーさんにもご相談しています。
関わるすべての人が「よかった」と思える施設であり続ける
― Ⅰ期の開業から半年が経ちました。お客様やテナントからはどのような声が届いていますか。
神田さん:お客様からは、「食事の選択肢が広がって楽しくなった」というお声をいただいています。北館と南館の3階のフードゾーンや、西館1階とノースゲートのフードコートと、複数のエリアで食事ができるようになりました。その時の気分やお店によって選んでいただけるのは、大きな変化です。特に休日のお昼はどうしても混雑しますので、「お腹が空いているのにどこも満席で入れない」というストレスをだいぶ緩和できたのではないかと思います。
テナントさんや従業員の方々にとっても、北館が新しくなったことで設備面や使い勝手が向上しています。お客様に笑顔になっていただくためには、まず従業員が働きやすい環境であることが大切です。Ⅰ期では、北館だけで従業員休憩室を5箇所新設し、座席にコンセントを設けるなど、休憩しやすい空間に一新しました。
― お客様にもテナントにも喜ばれるというのは、簡単なことではないように思います。
神田さん:我々デベロッパーがよいと思う施設が、必ずしもお客様にとって快適な施設とは限りません。立場が変われば、求めるものも変わります。だからこそ、お客様が「この施設があってよかった」と思ってくださり、テナントさんが「出店してよかった」と感じてくださる。その結果として、我々も「いいものを創れた」と思える。そういう施設づくりを一番大切にしています。
これは商業施設に限った話ではなく、ビルでもホテルでも物流施設でも同じです。関わるすべての方にとって価値のある建物づくり、まちづくりを目指していきたいと考えています。

― 最後に、ららぽーとTOKYO-BAYの今後のビジョンをお聞かせください。
神田さん:南船橋エリアではマンション開発の計画も進んでおり、街として人口も増えていくことが見込まれます。その中で、ららぽーとTOKYO-BAYが街の魅力に貢献できれば嬉しいです。
エリア内にはLaLa arena TOKYO-BAYや、ららテラスTOKYO-BAYなどの施設があります。商業施設同士の連携キャンペーンや、アリーナのイベントとのコラボレーションなど、ららぽーとに限らず街全体の魅力を発信していきたいですね。
そうした取り組みを進めながらも、ららぽーとTOKYO-BAYとしての原点は大切にしたいです。40年以上の歴史の中で愛されてきた施設であることは守りつつ、まだ来たことがない方にも「行ってみたい」と思っていただける。そして実際に足を運んでくださった方が「いい施設だな」と感じてくださる。そのような場所であり続けたいです。
三井不動産株式会社 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部 リージョナル事業部 事業推進グループ 主任 神田 彩香様